周辺住民がマンション業者を批判した事件

【横浜地裁平成15年9月24日】

この事件は、マンション建設業者と周辺住民との対立が発端となっています。

マンション建設に反対する周辺住民が、インターネット掲示板に、次のような書き込みをしました。

【1】○○地区2丁目は建築協定地域であり,建築協定に沿った建物を建てて欲しい。

地上7階 地下3階の集合住宅などもっての外です。

【2】こんな所に64世帯が入居し64台の車が出入りしたら交通渋滞・交通事故の続発する

名物道路(!?)の誕生。私たちは事故の被害者・加害者になる可能性が!!

【3】説明会を行ったところ,強引に計画を進めている割には顔ぶれがお粗末,

説明会の体をなさないのです。

【4】それ以外ろくな回答も無く,我々がもっとも問題にしている交通問題・地盤の危険性

についてなんら納得のいく説明をできないのです。

このような書込に対してマンション業者は、周辺住民に対して、名誉や信用が毀損されたとして、損害の賠償を求めました。

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     ※画像のマンションと本件とは一切関係ありません。

裁判所は、マンション業者の請求をすべて棄却しました。
つまり、1円の賠償も認めなかったということです。

まず【1】、【2】、【3】の書込については、マンション建設に反対する趣旨の意見の表明の範囲内にとどまるものであり、名誉毀損とはならない。
これに対して、【4】については、「意見の表明の範囲を超える,原告の企業としての経営姿勢等に関する具体的な事実の摘示を伴う意見表明として,マンション業者の社会的評価を低下させるものと認められないでもない」としました。(非常に回りくどい言い回しですね)
つまり、【4】の書込は、マンション業者の社会的評価を下げるものであるといえる、としたのです。

しかし、【4】の書込は、結局、公共の利害に関する事実について、専ら公益を図る目的でされたものであり、かつ、重要部分は真実である、として、結局、「真実性の抗弁」を認めて、名誉毀損の成立を否定したのでした。

つい書き込みたくなってしまう気持ちは良く分かりますが、書き込みをする前にもう一度自分の文章を読み直した上で書き込むのがよろしいかと思います。

一旦書き込んでしまうと、自分の書き込みであっても削除することが難しいサイトもありますゆえ・・・

 

(次回予告)
「真実性の抗弁」とは何か?その謎に迫ります。


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